京急百貨店の催事場に入ると、食品売り場のにぎわいの中に、赤い瓶が並んでいました。
新潟県妙高市の発酵調味料「かんずり」です。
唐辛子の赤。
けれど、見た目ほど単純な辛さではなさそうでした。
その赤の奥には、雪があります。
麹があります。
柚子の香りがあります。
そして、時間をかけて熟成させる、雪国の知恵があります。
かんずりの名前を意識したのは、自身のXで「発酵をめぐる、日本の食」という企画をしていたときでした。
全国には、土地ごとに根づいた発酵食品があります。
味噌、漬物、魚醤、麹、郷土の保存食。
調べていくほど、発酵はただの食品ではなく、その土地の気候や暮らしを映す文化なのだと感じます。
新潟県の発酵食品を調べる中で出会ったのが、妙高市に伝わる「かんずり」だったのです。
塩漬けにした唐辛子を雪にさらし、米麹、柚子、塩と合わせて、三年間熟成・発酵させる。
農林水産省の「うちの郷土料理」でも、かんずりは新潟県妙高市に伝わる発酵調味料として紹介されています。
文字で読んだだけでも、気になりました。
唐辛子を雪にさらすと、どんな味になるのだろう。
辛味はやわらぐのだろうか。
麹と柚子が加わると、どんな香りになるのだろう。
いつか実際に味わってみたい。
そう思っていたかんずりに、今回、上大岡の催事場で出会うことができました。
雪にさらされた唐辛子は、どんな味になるのか
かんずりの特徴は、なんといっても「雪さらし」です。
塩漬けにした唐辛子を、大寒のころに雪の上へさらす。
白い雪の上に、赤い唐辛子が広がる光景は、かんずりを象徴する冬の風景です。
かんずり社の公式サイトでも、大寒のころから塩漬けにした唐辛子を雪にさらす工程が紹介されています。
その後、麹、柚子、食塩とともに熟成・発酵させることで、独特の風味が生まれるとされています。
唐辛子というと、まず辛さを思い浮かべます。
でも、かんずりは辛味だけではありません。
米麹のうまみ。
柚子の香り。
塩味の奥にある、熟成の丸み。
雪にさらされ、時間をかけて育った唐辛子は、ただ刺激を足すだけの調味料ではなくなります。
料理に少し添えると、味の輪郭がふっと変わる。
そんな存在なのだと思います。
上大岡の催事場で、赤い発酵調味料に会いに行く

かんずりには定番の商品だけでなく、熟成期間の異なるものや、素材を掛け合わせたものなど、いくつかの種類があります。
「初めてなら、どれを選べばいい?」
「熟成すると、味はどう変わる?」
「いつもの料理には、どれが使いやすい?」
実際に売り場へ行ってみると、そんな疑問が次々と湧いてきました。
そこで今回は、定番のかんずりをはじめ、熟成による味の違いや、家庭の食卓で取り入れやすそうなものを中心に6品を選んでみました。
- かんずり
- 22年熟成かんずり
- 甘かんずりえのき茸
- かんゆずり
- 酒盗かんずり
- 生かんずり入りサーモン塩辛
実際に食べ比べてみると、同じ「かんずり」でも、辛味の感じ方や香り、うま味にはそれぞれ違いがあります。
ここからは、私が感じた味わいとともに、
・初めてならどれがおすすめか
・どんな料理に合わせやすいか
・それぞれにどんな違いがあるのか
を紹介していきます。
気になる一本を選ぶときの参考にしてみてください。
まずは定番の「かんずり」から

はじめに味わいたいのは、定番のかんずりです。
新潟県妙高市産の唐辛子に、麹、柚子、食塩を合わせ、三年以上の熟成・発酵期間を経て造られる香辛調味料として、かんずり社の商品紹介でも説明されています。
ふたを開けると、まず唐辛子の赤が目に入ります。
けれど、香りにはどこか柚子の明るさがあり、赤ではなく、それはオレンジ色。
辛そう。でも、辛いだけではなさそう、そんな第一印象です。
麹特有の甘みが唐辛子の辛さのとげをなくし、ほんのり柚子が香ります。
定番のかんずりは、鍋や湯豆腐に少し添えたり、納豆にひとさじがおすすめ。
味噌汁にほんの少し溶かしても、いつもの一杯に香りと辛味が加わります。
焼き鳥、餃子、冷奴、うどん、そば。
特別な料理を用意しなくても、いつもの食事に少し足せる。
そこが、かんずりの取り入れやすさだと感じます。
たくさん入れなくても大丈夫です。まずは小さじの先に少しだけ。
辛味や塩味の感じ方は、人によって違うので、自分に合う量を探しながら使うと、無理なく楽しめますよ。
22年熟成のかんずりは、時間を味わう一品

今回、とくに印象に残ったのが、22年熟成のかんずりです。
「22年」という言葉には、それだけで立ち止まってしまう力があります。
発酵食品は、時間とともに香りや味の印象が変わります。
もちろん、熟成が長いほど誰にとってもおいしい、という単純なものではありません。
22年という時間を重ねたかんずりには、ぜひ味わってみたいと思わせる深さがあります。
定番のかんずりが、日々の食卓に寄り添う味だとしたら、22年熟成は、少し姿勢を正して味わいたくなる一品です。
色の深さや、香りの立ち方。辛味の角。
定番のかんずりと並べて味わうと、22年の熟成かんずりは「味噌」そのもの。
色は濃く、定番かんずりのような柚子のふわっとした香りは熟成された期間と溶け込んでいます。
日常の食卓に並べるより、ちょっと特別な日に味わいたい一品で、クリームチーズと和え、ディップにしたり、焼きおにぎりにしたりするのがおすすめです。
甘かんずりえのき茸は、つるんと軽いごはんのおとも

甘かんずりえのき茸は、今回購入した中でも、日常の食卓にぴったりな商品です。
この甘かんずりえのき茸は「甘」とつくだけあり、通常のかんずりより甘味が加えられており、ごはんが止まらなくなる味わいとなっています。
その他、冷奴やそば、うどん、大根おろしと合わせて食べるのがお気に入りです。
すこし甘味があるので、お子さんにも楽しんでいただける一品となっています。
かんゆずりは、香りも楽しめるまろやかな辛味

かんゆずりは、通常のかんずりより、柚子が増量され、香り豊かな商品となっています。
唐辛子の辛味とは別に、柚子の苦みも相まって少し大人な味わいになっています。
柚子の香りを楽しめるため、湯豆腐や焼き魚、焼き鳥などにもピッタリです。
ペペロンチーノのパスタに、隠し味として入れるのもおすすめです。
酒盗かんずりは、発酵のうまみが重なる大人の味

まず酒盗かんずりは、名前からしてごはんやお酒が進みそうです(お酒のアテとして選びました)。
酒盗とは、カツオやマグロなどの魚の内臓を塩漬けにして、半年から1年以上、発酵・熟成させて作る塩辛の一種。
魚介の発酵感が好きな人には、少量でも満足感のある一品になることは間違いありません。
酒盗の濃いうまみ。
そこに、かんずりの辛味と柚子の香りが重なります。
日本酒や焼酎のあてに単品でも楽しめます。
その他、きゅうりと添えたり、お茶漬け、クリームチーズにもピッタリです(すべてつまみ系ですね)
酒盗系の商品は、塩気やうまみがしっかりしていることが多いため、一度にたくさん食べるより、少量ずつお楽しみくださいね。
生かんずり入りサーモン塩辛は、ごはんにのせたい発酵のごちそう

生かんずり入りサーモン塩辛は、名前を見た瞬間に炊きたてのごはんが浮かびます。
サーモンの脂のうまみに、かんずりの辛味が重なると、ごはんのおともとしての満足感が溢れています。
ごろっと大きなサーモンの塩辛に、生かんずりが入った味は、濃厚でとても食べやすく、ポテトサラダに添えたり、パスタにするのもおすすめです。
もちろんお酒のアテとして、大葉に添えてそのまま食べるのも◎
かんずりを食卓で楽しむ、かんたんレシピ
- かんずり冷奴
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冷奴に、かんずりをほんの少し。そこに、かつお節と小ねぎをのせます。
醤油は少なめで大丈夫です。かんずりの塩味と辛味があるので、まずは味を見ながら足していきます。豆腐のやわらかさに、唐辛子の辛味と柚子の香りが重なります。
暑い日にも、食欲があまりない日にも、無理なく試しやすい一品です。 - かんずり味噌汁
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いつもの味噌汁に、かんずりを少し溶かします。
おすすめは、豚汁、なめこの味噌汁、豆腐とねぎの味噌汁。
具材の甘みやうまみに、かんずりの辛味がよく合います。最初は、器に盛ってから少量を足すのがおすすめです。
- ゆずかんずりの蒸し鶏
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蒸し鶏やゆで鶏に、ゆずかんずりを少し添えます。
鶏むね肉やささみの淡白な味に、柚子の香りと辛味が加わります。
大葉、きゅうり、白ごまと合わせると、さっぱり食べやすい一皿になります。 - 酒盗かんずりクリームチーズ
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クリームチーズに、酒盗かんずりを少しのせます。
濃いうまみと塩気があるので、ほんの少量で十分です。
日本酒や白ワインのおともにも合いそうですが、塩分があるため、少しずつ楽しむのが安心です。
かんずりは、辛いものが得意な人だけのものではない
かんずりは唐辛子を使うため、辛味がありますが、魅力は辛さだけではありません。
麹のうまみや甘味。
柚子の香り。
雪さらしによる風味の変化。
熟成による奥行き。
かんずり社の公式サイトでも、和食や洋食の薬味、料理の隠し味など、さまざまな料理に使える調味料として紹介されています。
いつもの味噌汁に少し。
鍋の薬味に少し。
焼き魚に少し。
冷奴に少し。
それだけで、食卓の味に選択肢が増えます。
食生活を大きく変えなくても、調味料をひとつ変えるだけで、いつもの料理が少し新鮮に感じられることがあります。
発酵食品を取り入れるときも「毎日続けなければ」と考えすぎなくて大丈夫です。
おいしいから、少し使う。
香りが好きだから、また添える。
「気軽に使う」くらいの気持ちの方が、取り入れやすいですね。
FAQ
まとめ|地域の発酵食品に、実際に会いに行く楽しさ
かんずりは、新潟・妙高の風土から生まれた発酵調味料です。
Xで「全国の発酵食品をめぐる旅」を続ける中で知った味に、今回、京急百貨店の催事で実際に出会うことができました。
現地では、味見もさせていただきました。
かんずり社のみなさんが気さくにお話しくださり、作り方や人気の商品、食べ方のことも教えていただきました。
ひとつの発酵調味料から、いくつもの食べ方が広がっていく。
気になる方は、まずはいつものごはんや鍋に少し添えるところから。
雪国の赤い発酵調味料を、日々の食卓で楽しんでみるのもよさそうです。
なお、かんずり社さんは各地の物産展にも出店されています。
最新の出店情報は、かんずり社さんの公式ホームページをご確認ください。
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発酵メディアHakkology運営/BeachBum発酵教室主催
神奈川の海辺在住
発酵歴9年、麹づくり歴8年
発酵教室や麹づくり教室で伝えてきた経験をもとに、現在は「作り方」だけではなく、その背景にある「なぜ?」まで楽しめる発酵を発信しています。
