梅が店頭に並び始めると、今年も梅仕事の季節が来たなと感じます。
青梅のさわやかな香り。
少し黄色く色づいた完熟梅の甘い香り。
袋を開けた瞬間にふわっと広がる香りは、初夏だけの楽しみです。
「今年こそ梅干しを作ってみたい」
そう思いながらも、カビが生えたらどうしよう、塩分は何%がいいのかな、青梅と完熟梅はどちらを選べばいいのかなと、迷ってしまう方も多いかもしれません。
梅干し作りは、難しそうに見えて、基本を押さえればとてもシンプルです。
大切なのは、よい梅を選ぶこと。
塩分を極端に下げすぎないこと。
水気をしっかりふき取ること。
そして、梅酢が上がるまでやさしく見守ることです。
今回は、自宅でも毎年欠かさず仕込んでいる発酵教室講師の視点から、初心者さんでも失敗しにくい梅干しの作り方をやさしく解説しますね。
梅干しは「発酵していない漬物」です

発酵教室をしていると、よく聞かれることがあります。
「梅干しって、発酵食品なんですか?」
答えは、少し意外かもしれません。
梅干しは、基本的には発酵していない漬物です。
味噌や醤油、甘酒のように、微生物の働きで食材が変化するものを発酵食品と呼びます。
一方で、梅干しは梅に塩を加え、梅の水分を引き出しながら保存性を高める漬物です。
高い塩分や梅に含まれる酸の働きによって、微生物が活発に働きにくい環境になります。
漬物にも「発酵漬物」と「無発酵漬物」があり、梅干しは一般的に後者として扱われます。
だからといって、梅干しの価値が下がるわけではありません。
梅干しは、昔から日本の暮らしに根づいてきた保存食です。
暑い季節のお弁当、食欲が落ちる日のごはん、疲れた日の一粒。
発酵食品ではなくても、梅干しは暮らしを支えてきた、立派な伝統の保存食です。
梅干し作りに必要な道具と材料
まずは、基本の材料と道具をそろえましょう
材料
- 完熟梅 …… 1kg
- 粗塩 …… 160〜200g
- 焼酎またはホワイトリカー …… 少量
- 赤しそ …… 使う場合は後日追加
初心者の方におすすめの塩分は【16〜20%】です。
例:梅1㎏に対して16%の場合、塩160g。
最近は減塩の梅干しも多いですが、家庭で初めて作る場合は、塩分を下げすぎるとカビの原因になりやすくなります。
基本の梅干しでは18%前後をすすめるレシピも多く、初心者の方はまず16〜20%の範囲で作ると安心です。しょっぱさが気になる方もいると思いますが、梅干しは一度にたくさん食べるものではありません。
まずは失敗しにくい塩分で作り、慣れてきたら少しずつ自分好みに調整するのがおすすめです。
道具
- 保存容器
- ビニール袋
- 竹串
- キッチンペーパー
- 竹ザル
- 食品用手袋
容器は、ガラス瓶、食品用の保存袋(ラミジップ)などが使えます。
大切なのは、清潔にすることです。
熱湯消毒できるものは熱湯を使い、できないものはアルコールなどでふいておきましょう。
容器は間口が広いものがおすすめです
お味噌作りをする方はラミジップがあると便利です
梅選び|青梅と完熟梅、初心者に向いているのは?
梅干し作りでとても大切なのが、梅選びです。
梅干しに向くのは、皮が薄くて果肉がやわらかい品種です。
代表的なのは、和歌山の南高梅、関東で出回る白加賀、福井の紅映(べにさし)などです。
ちなみに私は、青森や山形など、東北で育つ豊後梅(ぶんごうめ)を好んで使っています。
果肉が厚く、梅干しにすると食べ応えのある仕上がりになります。産地によって風味や大きさに違いがあるので、毎年少しずつ比べてみるのも梅仕事の楽しみです。
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梅には大きく分けて、青梅と完熟梅があります。
青梅
青梅は、まだ若くてかたい梅です。
香りはさわやかで、梅シロップや梅酒に向いています。
ただし、青梅のまま梅干しにすると、皮がかたく仕上がりやすくなります。
アクも強いため、初心者さんには少し扱いにくいことがあります。

完熟梅
完熟梅は、黄色く色づき、桃のような甘い香りがしてくる梅です。

皮がやわらかく、梅酢も上がりやすいので、梅干し作りには完熟梅がおすすめです。
特に初めて作る場合は、完熟梅を選ぶと失敗しにくくなります。完熟梅はアク抜きが不要で、下処理も比較的しやすいとされています。
青梅しか手に入らなかったときの追熟方法
青梅を買ったけれど、梅干しにしたい。
そんなときは、すぐに漬けずに追熟させましょう。
青梅を新聞紙や紙袋の上に広げ、風通しのよい場所に置きます。
直射日光は避けて、常温で1〜3日ほど様子を見ます。梅全体が黄色くなり、甘い香りがしてきたら漬けどきです。
ただし、追熟中に傷みが出ることもあります。
黒くなったもの、ぶよぶよしているもの、傷が深いものは取り除きましょう。

梅干しは、最初の梅選びで仕上がりが大きく変わります。
迷ったら、香りがよく、傷の少ない完熟梅を選んでくださいね。
参考:追熟の変化
追熟をしていくと、梅の香りが少しずつ優しい香りに変化していきます。
また、しっかり完熟できた梅を使うことにより、梅酢も上がりやすくなります。



追熟度合いがまばらな場合は、完熟したものから先に漬けていくことをおすすめします。
梅干しの漬け込み手順
ここからは、実際の漬け込み手順です。
数年間の試行錯誤を経て、簡単に作れる梅干し手順ができあがりましたので、ぜひ作ってみてくださいね。

完熟梅をボウルに入れ、30分ほどお水にさらし、その後、流水でやさしく洗います。
完熟梅は皮がやわらかいので、こすらないように気をつけます。
傷をつけると、そこから傷みやカビの原因になることがあります。
洗った梅は、ざるに上げて水気を切ります。
梅干し作りで大切なのが、水気を残さないことです。
清潔な布巾やキッチンペーパーで、梅を1粒ずつやさしくふきます。
くぼみの部分にも水が残りやすいので、丁寧にふき取りましょう。
水分が残っていると、カビの原因になりやすくなります。

竹串を使い、梅のヘタを取ります。
金属の串でもできますが、梅を傷つけにくい竹串がおすすめです。
ヘタの周りは汚れが残りやすいので、ここも丁寧に取っておきます。

梅全体に焼酎やホワイトリカーを少量まぶします。
これは、消毒の意味もありますが、塩をなじみやすくするためでもあります。
スプレーで吹きかけても、ボウルの中でやさしくまぶしても大丈夫です。
焼酎を使わない場合は、より清潔に作業することを意識しましょう。

焼酎をまぶした後、塩をつけ、容器に入れます。
この時、ヘタがついていたところにしっかりと塩をつけていきます。
カビを防ぐために、塩をつけていきます。
最後に残った塩を上にのせます。
塩は上に多めにのせると、梅酢が上がりやすくなります。

重石を持っていない場合は、ビニール袋に水を入れて代用します。
水漏れすると腐敗の原因になるため、ビニール袋は2〜3枚重ねて口を縛ると安心です。
重石の目安は、梅全体に乗っかる程度で大丈夫です。
数日すると、梅から水分が出てきます。
これを梅酢と呼びます。
梅酢がしっかり上がって、梅全体が浸かるようになると、カビが生えにくくなります。
梅酢は、早ければ2〜3日で上がってきます。
梅が梅酢に浸かってきたら、重石を少し軽くしても大丈夫です。
梅がつぶれそうな場合は、様子を見ながら調整しましょう。
蓋は開けると、雑菌が入る原因になります。
外から様子を見て、梅酢が上がっているか確認しましょう。
梅酢がしっかり上がったら、そのまま土用干しまで漬けておきます。
目安は、梅雨明け後の晴天が続く日まで。
6月に漬けた場合は、だいたい3〜4週間ほど漬けたままにして、7月中旬〜下旬ごろの土用干しを待つことが多いです。
この間も、梅が梅酢から出ていないかだけは確認しましょう。
梅が空気に触れるとカビの原因になることがあるため、常に梅酢に浸かっている状態を保つのが安心です。
白梅干し?赤梅干し?赤シソを使うかどうか
色合いや香りに違いがあるので、お好みで選んでみてくださいね。ここまでが「白梅干し」の基本の手順です。
お店で見かける鮮やかな赤い梅干しは「赤梅干し」と呼ばれ、白梅干しに赤シソを加えて作ります。
- 白梅干し
-
そのまま漬けて作る、淡い色合いの梅干しです。
梅本来の味と香りをそのまま楽しめます。 - 赤梅干し
-
赤シソを加えることで、鮮やかな赤色と、独特の香りが楽しめる梅干しです。
副産物として、赤く色づいた梅酢で「ゆかり」を作ることもできます。
赤シソを加えるタイミングと量
赤シソは、6月下旬から7月にかけて店頭に並びます。
梅酢が上がってから(漬け込み開始から1〜2週間後)、塩もみしてアク抜きをした赤シソを加えます。
目安は、梅1kgに対して赤シソ100〜200gほど。お好みで色の濃さを調整してください。
土用干しのときは、赤シソも一緒に干します。干した赤シソは、すり鉢で細かくすると「ゆかり」になります。
土用干しは、梅雨明け後のお楽しみ

梅干し作りの仕上げが、土用干しです。
土用干しとは、梅雨が明けて晴れが続く時期に、漬けた梅を天日に干す作業のことです。
6月に漬け込んだ梅は、すぐには干しません。
梅雨明けを待ち、晴天が3日ほど続きそうなタイミングで干します。
干すときは、竹ザルがおすすめです。
竹ザルは風通しがよく、余分な水分も逃げやすいため、梅干し作りに向いています。
梅干しを干す道具として、通気性のよい竹製のざるは基本とされています。
竹ざるがあると、干し野菜などにも有効活用できるので1つあるととても便利です
漬ける量が少ない場合、角ざるを逆さにし干すことで通気性がよくなります
天日干しの手順・ポイント
ここから天日干しの手順をご紹介します。
大切なポイントもあるので、そちらも併せてご案内しますね。
雨にあたると傷みの原因になるため、天気が不安定な日は、無理に干さないことも大切です。

① 朝6時~12時くらいまで日当たりと風通しのよい場所で干します。
② その後は、室内に戻し、風通しのよい場所に置きます。
皮が破れやすいため、触らずそっとしておいてください。
③ 夜になるとしっとりするので、ここでひっくり返します。

1日目と同様に繰り返します。
① 朝6時~12時くらいまで日当たりと風通しのよい場所で干します。
② その後は、室内に戻し、風通しのよい場所に置きます。
皮が破れやすいため、触らずそっとしておいてください。
③ 夜になるとしっとりするので、ここでひっくり返します。

3日目も同様に繰り返します。
① 朝6時~12時くらいまで日当たりと風通しのよい場所で干します。
② その後は、室内に戻し、風通しのよい場所に置きます。

3日目の夜、保存瓶を消毒し、干した梅を入れます。
その後、漬けた時に出た梅酢を入れて、保存します。
- 三日三晩干さない
-
梅干しが乾燥し硬くなるため、日差しの弱い午前中のみ干します。
- 触らない
-
皮が破れやすいため、必要以上に触らないようにしましょう。
完成後の保存と食べ方

土用干しが終わった梅干しは、清潔な保存容器に入れて保存します。
すぐに食べることもできますが、少し寝かせると塩角が取れて、味がなじんできます。
できれば1〜3か月ほど置いてから食べると、よりまろやかに感じられます。
保存は、清潔な容器に入れ、直射日光を避けて保存します。
塩分が高めでしっかり作った梅干しは常温保存もされてきましたが、家庭では環境によって温度や湿度が変わります。心配な方は冷蔵庫で保存すると安心です。
食べ方は、ごはんにのせるだけでも十分。
おにぎりに入れたり、梅肉和えにしたり、暑い日の味噌汁に少し加えてもおいしいです。
また、刻んだ梅干しともずく酢のスープにお醤油を少し付け加えたスープもおすすめです。
梅の酸味が入ると、食欲が落ちやすい季節にも食べやすくなりますよ。
発酵食品の保存方法はこちらの記事でご案内しています

よくある失敗と予防のコツ
- カビが生える
-
カビの原因は、水気、傷んだ梅、塩分不足、梅酢が上がるまでの時間などです。
予防のためには、梅の水気をしっかりふき取ること。
傷のある梅を取り除くこと。
塩分を下げすぎないこと。
梅酢が上がるまで重石をきちんとのせることが大切です。 - しょっぱすぎる
-
初心者さんには16〜20%がおすすめですが、昔ながらの梅干しはやはりしょっぱいです。
しょっぱく感じる場合は、刻んで料理に使うのがおすすめです。
ごはんに少量混ぜたり、和え物やドレッシングに使うと、塩味と酸味が調味料のように働きます。 - しわしわ、かたい仕上がりになる
-
青梅のまま漬けると、皮がかたく仕上がりやすくなります。
やわらかい梅干しにしたい場合は、完熟梅を使いましょう。
また、土用干しで干しすぎないことも大切です。
梅干し作りのよくある質問(FAQ)
まとめ
梅干し作りは、むずかしそうに見えて、基本はとてもシンプルです。
- 完熟梅を選ぶ
- 水気をしっかりふく。
- 塩分は16〜20%を目安にする。
- 梅酢が上がるまで、あわてず見守る。
- 梅雨明け後、晴れた日に土用干しをする。
この流れを押さえれば、初心者さんでも梅干し作りに挑戦しやすくなります。
梅干しは発酵食品ではありません。
けれど、発酵と同じように、日本の暮らしの中で大切に受け継がれてきた保存食です。
手をかけた梅が、少しずつ変化していく時間。
ふたを開けたときの香り。
梅雨明けを待つ楽しみ。
梅干し作りには、レシピだけでは味わえない季節のよろこびがあります。
今年の梅仕事に、まずは1kgから。
初夏の手しごとを、やさしく楽しんでみてくださいね。
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発酵や暮らしのこと、
ひとりで抱えなくて大丈夫

BeachBum発酵教室主宰
神奈川の海辺在住
発酵歴9年、麹づくり歴8年
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